情報/資料

■厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業

「精神障害者の就労移行を促進するための研究」平成27年度 総括分担研究報告
(本研究は平成27年度において、厚生労働科学研究費補助金(障害者対策政策総合研究事業(精神障害分野))を受け、実施した研究の成果です。)

総括研究報告
「精神障害者の就労移行を促進するための研究」

研究代表者 秋山剛(NTT東日本関東病院精神神経科部長)

(研究要旨)
本研究では、精神障害者の就労移行状況における課題の把握(1.中小企業との連携強化方法の提示、2.地域における諸機関との連携の標準化、3.疾病・服薬の運転技能への影響の検討、4.文献レビュー、5.再休職状況の把握、6.短期間のリワークプログラムモデルの開発)、うつ病患者をふくむ精神障害者に対する復職体制の構築(7.リワークプログラム利用群の長期予後、8.リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究、9.リワークマニュアルの有効性の検証、10.リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究、11.リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化、12.発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化)、精神障害の就労支援(13.医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討)を目的としている。このうち、7.リワークプログラム利用群の長期予後については、平成26年度までで分析を終えているので、今年度はその他の研究課題について報告する。
1.中小企業との連携強化方法の提示については、@中小企業において、一次予防のために、社員研修会で使用できる分かりやすい資料の出版A復職後のフォローアップツールの改訂、B社会保険労務士を対象とする中小企業における包括的なメンタルヘルス対応に関する講演会の有効性の確認を行った。
2.地域における諸機関との連携の標準化については、他院との連携方法、治療機関と企業との連携方法、モデル文書の作成について、実態調査および問題点の抽出を行った。連携を適切に行うには治療機関側に担当者(リワークコーディネーター)を置くことが効果的と考えられる。また、連携に関連する費用の経済的評価が必要と考えられる。
3.疾病・服薬の運転技能への影響の検討では、治療中で社会復帰準備期にあるうつ病患者の運転技能を検討し、健常者との比較を試みた。向精神薬は慢性投与下ではその影響は小さいことが示唆され、運転適性判断においては、一律の規定ではなく、複合的要因に配慮した総合的な判断が必要である。
4.文献レビューについては、@復職支援に関する介入研究は数が少なく、また研究が行われている地域が、限局、偏在している、A対象が男性、精神科施設での介入、24ヵ月以上の追跡調査が介入の有効性に関連している可能がある。
5.再休職状況の把握については、業務内外ストレスシート、上司や職場の対応調査シートの改訂案が作成された。業務内外ストレスシートについては、項目を集約できる可能性について検討する必要がある。
6.短期間のリワークプログラムモデルの開発については、短期型を選択する患者と既存型を選択する患者には背景要因に違いがある可能性が示された。両群の比較を行う際には、背景要因を統計的に統制する必要がある。
8.リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究では、間接費用、すなわち労働生産性の損失については、欠勤等により発生する労働生産性の損失であるabsenteeism は復職時より比較的少なく、1年を通して変化は見られなかった。就労下において発生する罹病による労働生産性の損失であるpresenteeism については、1年間の追跡の結果、有意な改善が見られていた。
9.リワーク指導マニュアルのRCT では、復職決定時における活動性の維持は、復職継続率を高める可能性がある。リワークマニュアルの有効性に関しては次年度検討する予定となっている。
10.リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究については、「基礎コース」「専門コース」研修を実施した。各施設におけるプログラムの質の担保が確認できるような内部評価項目の検討を行い、外部評価を行うための方策の検討も実施した。
11.リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化については、9施設の調査を実施した。実地調査からは、経済面、人材面、研究面、医療面での問題や課題が明らかになった。
12.発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化については、「能力発達のばらつきへのリワーク支援の手引き」第20版が作成され、次年度に有用性の検証を行うことが可能になった。
13.医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討については、研究参加機関は5つの医療機関、13の地域就労支援機関の合計14機関(うち1機関は脱落)であった。13機関のフィデリティ得点、対象者の性別、平均年齢、GAF 得点は、過去の援助付き雇用に関する研究における対象者の数値と比較し、統計的な有意差はなかった。

分担研究報告
「中小企業との連携強化方法の提示」

分担研究者 秋山 剛    NTT東日本関東病院精神神経科・心療内科 部長

(研究要旨)
わが国では、労働者の多くが中小企業・小規模事業者に勤務しており、職域におけるメンタルヘルスの改善、リワーク支援を広めるには、中小企業への働きかけを強めなければならない。本研究では、@中小企業において、一次予防のために、社員研修会で使用できる分かりやすい資料の出版A復職後のフォローアップツールの改訂、B社会保険労務士を対象とする中小企業における包括的なメンタルヘルス対応に関する講演会の有効性の確認を目的とした。その結果、@昨年度作成されていた一次予防研修に関する資料に基づいて、一次予防資料が出版された。A4名の社会保険労務士からの聞き取りに基づいて復職後のフォローアップツールの改訂資料が改訂された。B社会保険労務士を対象とする中小企業における包括的なメンタルヘルス対応に関する講演会の有効性が確認された。一次、二次、三次予防の資料について、社会保険労務士等への普及を進めることによって、我が国の中小企業におけるメンタルヘルス施策が、大きく進む可能性がある。

分担研究報告
「地域における就労活動のための諸機関との連携の標準化」

分担研究者  五十嵐良雄 メディカルケア虎ノ門 院長

(研究要旨)
うつ状態を呈する精神疾患で休職した労働者に対し、復職と再休職予防を目的とした治療プログラムであるリワークプログラム(以下、プログラム)を実施している医療機関(以下、治療機関)において、関連する諸機関との連携は欠かせないものである。特に主治医が治療機関でない場合の他院主治医と治療機関の連携は、プログラムへの受入から終了までの各段階において適宜求められる。また、プログラム利用者の所属する企業との連携についても、スムーズに職場復帰をするためには相互に必要な情報を取り交わすことが必要となる。
そこで、本研究では連携の実態調査として「治療機関と他院主治医との連携(研究1)」と「治療機関と企業との連携(研究2)」に関するアンケート調査を実施した。連携の手段として「書面」「診察・面談」の2つの方法(企業との連携については「ケース会議」の方法も追加)に関して、実際の連携がどのように行われているのかを、『いつ、だれが、だれに、どこで、どんな内容を、いくらで』おこなっているかに関して、具体的内容とその方法や労力について回答いただいた。また、連携時に使用している各種帳票を提出していただきモデル文書(研究3)を作成した。
「治療機関と他院主治医との連携(研究1)」では、プログラムの受け入れ時点で、自院への主治医変更が「原則必須ではない」と回答したのは90施設(68.7%)であり、そのうち他院と連携しているのは76施設(84.4%)であった。連携している理由としては「必要性を感じているため」が73施設(96.1%)であった。書面による他院との連携については74施設(98.7%)が実施していた。連携する時期としてはリワーク開始前から参加中、復職前後までいずれの時期でも行われていた。治療機関側担当者は担当スタッフを中心に医師が加わり、他院側担当者は殆どが主治医であった。診察・面談による他院との連携については18施設(24.0%)が実施していた。自院で連携する場合は、リワーク開始前にリワーク担当医が他院主治医と本人同席で行いプログラム参加の適性や現症について連携する率が高く、他院で連携する場合はリワーク参加中に自院担当スタッフが他院主治医に本人同席で出欠席の状況などについて連携する率が高かった。書面と診察・面談いずれの連携も1時間前後の時間を費やしているが、ほとんどが無報酬で行っていた。
「治療機関と企業との連携(研究2)」では、105施設(80.8%)が連携していた。書面による企業との連携は84施設(82.4%)で行っていた。復職前・復職時に治療機関側スタッフと人事労務担当者が本人の特性や復職時の配慮事項について1時間以上かけて無報酬で文書を作成し連携する率が高かった。診察・面談による企業との連携は95施設(91.3%)で行っており、復職前復職時に主治医が人事労務担当者や上司に40分ほど治療経過や職務内容について連携する率が高かった。費用は約半数が無報酬であった。ケース会議による企業との連携は24施設(25.3%)で行っており、復職前・復職時に担当スタッフを中心に職場で約1時間無報酬で上司に対し治療経過や職場環境などについて連携する率が高かった。
モデル文書(研究3)の作成では、治療機関で実際に使用している帳票を24施設から提出を受け48種の文書を基にリワーク開始から復職前後を4期に分け、各期で他院主治医や企業と連携する際の書式を作成した。
治療機関では必要性を感じ各時期において主治医や企業と、様々な手法で連携を工夫して行っていることが明らかになった。また、連携を適切に行うには治療機関側に担当者(リワークコーディネーター)を置くことが効果的と考えられることも判明した。ただし連携の多くが無報酬で行われており、連携しない理由のマンパワー不足や時間が無いといった理由とも関連するが連携に関連する費用の経済的評価が必要と考えられる。

分担研究報告
「社会復帰準備期にあるうつ病患者の運転技能に関する検討」

分担研究者 尾崎 紀夫 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野 教授

(研究要旨)
自動車運転死傷行為処罰法や改正道路交通法が施行され、精神障害や薬剤による影響と判断された交通事故や虚偽申告が厳罰の対象となっている。こうした一連の厳罰化の流れに加え、大多数の向精神薬の添付文書には服用中の運転中止が明記されている。向精神薬は再発予防効果を有し、社会復帰後も継続服用が不可欠であるため、これら一律の規定は、病状の如何にかかわらず、服用中の運転中止を求めざるを得ない。一部の大都市を除けば、うつ病患者の社会生活に大きな支障が生じているのが現状である。しかしながら、厳罰化や添付文書記載を裏付ける実証的データは乏しく、十分な証左がないまま議論されているのが現状である。そこで、本研究では、治療中で社会復帰準備期にあるうつ病患者の運転技能を検討し、健常者との比較を試みた。対象は、運転歴のあるうつ病患者68名と、性と年齢をマッチさせた健常者67名であり、うつ病患者の多くは寛解していた。運転技能については、両群で統計学的有意に異ならなかったが、課題成績のばらつきが大きく、年間走行距離が有意に影響していた。運転技能、認知機能、症状評価尺度について重回帰分析を行ったが、認知機能や症状評価尺度は十分な予測指標とはならなかった。運転課題の中でも、追従走行課題にばらつきが大きく、その要因を検討したところ、社会適応度、年間走行距離、注意機能といった要因が関与することが示唆された。向精神薬は慢性投与下ではその影響は小さいことが示唆され、運転適性判断においては、一律の規定ではなく、複合的要因に配慮した総合的な判断が必要である。

分担研究報告
「文献レビュー ―復職支援に関する介入研究の文献的検討―」

分担研究者 秋山剛 NTT東日本関東病院精神神経科部長

(研究要旨)
気分障害により休職している患者の復職を支援するプログラムを実施している論文を検討し,介入内容や効果についてのエビデンスを統合する。また、介入の有効性への関与要因を検討した。1)精神疾患を有して休職している企業社員を対象としている,2)復職までの期間の短縮または復職後の就労継続を支援するための非薬物的介入を実施している,3)通常治療群もしくは通常処遇群を設定している,4)アウトカムとして復職までの期間または復職後の就労継続を評価している,5)研究デザインが無作為割付試験または準実験デザインである,6)日本語あるいは英語で書かれている、を基準として、14本の論文が抽出され、そのうち4本が有効性を報告していた。@復職支援に関する介入研究は数が少なく、また研究が行われている地域が、限局、偏在している、A対象が男性、精神科施設での介入、24ヵ月以上の追跡調査が介入の有効性に関連している可能があることが結論された。

分担研究報告
「再休職状況の把握」

分担研究者 秋山剛 NTT東日本関東病院精神神経科

(研究要旨)
復職後、精神症状が再発、再燃し、再休職にいたる事例がある。再休職にいたる状況を把握するための研究方法は、現在のところ確立していない。本研究では、再休職時にどのようなストレス要因が発生していたのか、また上司や職場がどのような対応を行っており、その対応が社員本人にどのように受け取られているのかを把握するための業務内外ストレスシート、上司の対応調査シートの改訂案を作成した。職場ストレスに関する項目があまり多数では、かえって回答の信頼性が低下するおそれがあるので、今回改訂された資料についてさらに検討を加え、「精神障害の労災認定基準平成23年12月」の項目の集約化を妥当な形で進める必要があると考えられる。今回改訂された上司や職場の対応」調査シートによって、上司や職場が常にとった方がよい行動、常にとらない方がよい行動、状況によって使い分ける必要がある行動が明らかにできることが望まれる。

分担研究報告
「リワークマニュアルの効果を検討するための無作為比較試験のプロトコルおよび進捗状況」

分担研究者 酒井佳永(跡見学園女子大学文学部臨床心理学科准教授)

(研究要旨)
わが国では精神疾患による休職者の復職および復職後の再休職防止を目的とした復職支援プログラム(以下リワークプログラム)が全国の医療機関で実施されており、その効果についても検証されつつある。しかし既存のリワークプログラムは参加期間が長く、中小企業やそこに勤務する労働者が利用しにくいという課題があり、短期間で実施できるリワークプログラムへの社会的要請が高い。そこで短期型リワークプログラムを実施し、既存型リワークプログラムとアウトカムを比較するとともに、医療経済的な評価を行うことを目的とする研究を実施する。本報告では研究のプロトコルを紹介するとともに、現時点における進捗状況および課題を報告する。
研究デザインはランダム割付けを伴わない前向きコホート研究とし、参加プログラムは対象者の希望で決定する。評価については、介入開始3カ月/6カ月後時点に、社会機能、復職準備性、精神症状等を評価し、復職後に1カ月に1回、就労継続状況、ワークパフォーマンス、健康関連QOLを評価する。費用については、直接費用(医療費と薬剤費)および間接費用(労働生産性損失:absenteeismとpresenteeism の総計)を算出する。解析では、両群におけるアウトカムに差があるかどうかを検討するとともに、医療経済的評価として費用効用分析、費用効果分析、費用便益分析を実施する。
進捗状況としては、2016年3月時点で10人が研究に導入され、5人が短期型、5人が既存型プログラムを選択した。短期型を選択する人はプログラム開始時点の精神症状が軽症、過去の休職回数が少ない、休職開始からプログラム開始までの期間が長い、残休職期間が短い傾向があり、短期型を選択する患者と既存型を選択する患者には背景要因に違いがある可能性が示された。両群の比較を行う際には、背景要因を統計的に統制する必要がある。今後、対象者の募集を継続するとともに、来年度以降に中間解析を実施し報告する予定である。

分担研究報告
「リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済学的研究〜気分障害による長期休職者の復職後の労働生産性に関する調査〜」

研究分担者  山内慶太 慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授

(研究要旨)
リワークプログラムを利用した、気分障害による長期休職者を対象に、復職後の労働生産性について調査する。調査は復職後1年間であり、リワークプログラム終了時、復職1、6、12ヶ月後の計4回にわたり、郵送による自記式質問紙調査を実施する。H28年1月現在、組入期間中であるが、26医療機関より194人の対象者の同意を得て調査を実施している。現時点で全ての調査が終了した対象者は15人であり、その中間解析を実施した。復職時点で臨床的症状は見られない程度に症状は回復しており、復職後1年を通して症状は安定していた。また、間接費用、すなわち労働生産性の損失については、欠勤等により発生する労働生産性の損失であるabsenteeism は復職時より比較的少なく、1年を通して変化は見られなかった。就労下において発生する罹病による労働生産性の損失であるpresenteeism については、1年間の追跡の結果、有意な改善が見られていた。
最終的には、収集した実際の臨床データから間接費用を推計し、その経時的変化と復職後の労働生産性に関わる関連要因を検討する予定である。

分担研究報告
「リワークマニュアルを用いた気分障害患者の復職に対する有効性の研究 復職継続要因の検討」

分担研究者 堀輝 産業医科大学精神医学教室

(研究要旨)
気分障害による休業者は増加している(Okuma and Higuchi 2011)が、休業から復職した後に、再休職に至る症例が多いことも複数報告されている(堀ら2013; Endo et al., 2013 ; Sado et al.,2014)。しかし、休職から復職後の最初の1年に最も頻繁に再発や再休職に至る(堀ら2013 ;Endo et al., 2013)。現在リワーク活動が精神科病院や診療所の外来・病棟内やデイケアを用いて、全国で盛んになされているが、そのためにはある程度の人員や期間等を要するために、多くの勤労者を対象とできるとはいいがたい。本年度は、@リワークマニュアルを用いた指導の有効性の検証を無作為化割り付け試験で行うこと、A復職継続に関連する要因の検討を行った。

分担研究報告
「リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究」

分担研究者 五十嵐良雄 メディカルケア虎ノ門院長

(研究要旨)
リワーク実施施設でのプログラムの均てん化を図るため、施設職員が受けるべき研修の内容について検討し、新体制での「基礎コース」「専門コース」研修を実施した。今回実施した研修の次の段階として、実地研修も取り入れて実地に役立つ研修体制を構築する。実地研修は、来年度、実施に向けた準備を進めていく予定である。また、リワーク実施施設の人員、設備、プログラム内容について、標準化リワークプログラムの内容に準じたプログラム構成を重視し、各施設におけるプログラムの質の担保が確認できるような内部評価項目の検討を行い、外部評価を行うための方策の検討も実施した。

分担研究報告
「リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化に関する研究」

研究分担者 五十嵐良雄 メディカルケア虎ノ門

(研究要旨)
全国の医療機関で様々なリワークプログラムが行われている。平成22,23年度の厚生科学研究でリワークプログラムの標準化をテーマに研究し、5つのカテゴリーに分けた標準化リワークプログラムを作成した。うつ病リワーク研究会では所属する全国の医療機関で基礎調査を実施しているが、プログラムに関する調査項目も含まれている。その結果、各施設は様々な工夫を行い、年々その内容が変化していることが判明している。そこで本研究では、初年度には独自に行っている工夫について、その内容を1.性別、2.年代、3.利用時期、4.疾患、5.職業、6.就労状況、7.生活状況、8.業務内容、9.その他の9項目に分類し、うつ病リワーク研究会会員施設に対し各施設で独自の取り組みと考えるプログラムに関するアンケート調査を実施し、その結果を取りまとめた。2年度目となる本年度は、初年度の結果を踏まえ、モデルプログラムとなりうるプログラムを実施しているリワーク施設への実地調査を行ったが、調査受け入れ可能施設が限られており、実地調査は6件に留まった。これに、ワーキングチームメンバーが勤務する3施設を加えて、各施設で独自に実施されているプログラムについて、対象の焦点化の理由と方法、プログラム内容と構成、施設背景における必然性を説明する要素、アウトカムなどに関して9施設の調査を実施した。本研究を通じて、独自に工夫されたプログラムが誕生した背景などが明らかになった。プログラムの内容は、今後のリワークプログラムの開発・普及に参考となるものであった。一方、実地調査からは、経済面、人材面、研究面、医療面での問題や課題が明らかになった。最終年度となる3年度目は本研究で明らかになった問題点に焦点をあてて、リワークプログラムの標準化を更に深化させ、リワークプログラムを安定して続けていくためのガイドラインとなる書籍の発行を目指す。

分担研究報告
「発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化」

分担研究者 秋山剛 NTT東日本関東病院精神神経科部長

(研究要旨)
発達障害の診断基準を満たさないが、発達障害の特徴を有し、対人関係に障害がある者が、就労後職場での適応や業務の遂行に困難を来たし、二次障害としてうつ状態を呈し、休職に至る事例が存在する。本研究は、発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援について、既にこういった対象を受け入れ支援を行っているリワークプログラムのスタッフおよび発達障害の専門家から情報収集を行うことを目的とした。リワークプログラムについては、一般の患者と一緒のプログラムへの参加を原則とするが、対人関係における自己特性の理解やコミュニケーションスキルへの支援、発達障害に関する心理教育を別個に実施することが望ましいと思われる。また、WAIS などの心理検査の実施、多岐にわたる配慮、職場との情報共有、相互交流を進める、という方針が考えられる。発達障害の観点からは、連絡ノートによる書面での確認の活用、言葉遣い・声の大きさなどの調整、トラブル時の具体的提案、職場における担当者の決定、大まかな業務スケジュールの決定・伝達などの提案が得られた。今回の情報収集によって、次年度に、「発達障害の傾向がある利用者への対応に関するガイド」といった資料を作成することが可能になった。

分担研究報告
就労支援に取り組む精神科医療機関および就労移行支援事業所における就労支援プログラム新規利用者のナチュラルコース・コホート研究:ベースライン調査結果

分担研究者 山口創生 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部

(研究要旨)
目的:本研究は、援助付き雇用型支援を提供する機関における統合失調症の利用者を対象として、就労支援における効果的なサービス要素や就労アウトカムに影響する個人要因を検証することを目的とする。本稿では、進捗状況を報告するとともにベースライン調査の結果を報告する。
方法:援助付き雇用型支援を行う医療機関や地域の就労支援機関の新規利用者を対象に、12ヵ月の前向き調査を行う。アウトカム調査は、就労アウトカムや機能(Global Assessment of Functioning: GAF とLife Assessment Scale for the Mentally Ill : LASMI)、就労への動機付け(モチベーション尺度)、生活の質(SF-8)、心理的ウェルビーイング、利用者からみたスタッフのストレングス志向性を包含する。また、プロセス調査として、支援の内容とその量(時間)をサービスコード票でモニタリングする。コストデータについても日本版クライエントサービス受給票(Client Service Receipt Inventory-Japanese version : CSRI-J)を用いて把握する。対象者のエントリー期間は、2014年12月1日から2015年11月30日まであった。また、各機関が提供する援助付き用型支援の質を評価するために、日本版個別援助付き雇用フィデリティ調査を実施した。本年度は初回(ベースライン調査)およびフィデリティ調査を完了した。
進捗:研究参加機関は5つの医療機関、13の地域就労支援機関の合計14機関(うち1機関は脱落)であった。13機関のフィデリティ得点の平均値は90.23(SD=12.18)であった。対象者は52名がエントリーした(3名が追跡不可になる可能性あり)。52名のうち、約7割(n=37)が男性であり、平均年齢は36.98歳(SD=8.51)であった。また、GAF 得点の平均値は49.40(SD=11.96)であった。これらの数値は、過去の援助付き雇用に関する研究における対象者の数値と比較し、統計的な有意差はなかった。

「リワークプログラムを中心とするうつ病の早期発見から職場復帰に至る包括的治療に関する研究」平成20、21、22年度 総括分担研究報告

「うつ病患者に対する復職支援体制の確立 うつ病患者に対する社会復帰 プログラムに関する研究」23年度、24年度、25年度 につきましては以下より検索ください。
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIST00.do

「うつ病リワーク研究会 平成26年度基礎調査」

(研究要旨)
うつ病リワーク研究会所属の施設と利用者を対象とし、リワークプログラム(以下プログラム)の実施状況を毎年1 日調査している。今回は8 回目の調査であったが、194 医療機関のうち146 医療機関から回答を得た(回答率(75.6%)。病院が38.4%、診療所が58.2%で比率は昨年より病院が0.8%増加した。復職支援(以下リワーク)以外の対象者をプログラムで受け入れている施設は47.9%あり、対象者は「社会適応技術の習得を目的とした発達障害者(思春期、成人とも)」、「社会生活機能改善を目的とした主に統合失調症患者」、「居場所の提供を目的とした慢性期精神疾患患者」の順で多かった。診療報酬上、最も多い区分は精神科デイケアで67.1%、週5 日の開催は51%であった。スタッフの業務のうち1 日あたりの個別記録作成時間は平均121.0 分であった。現在運用されているリワーク施設全体の定員は3,202 人であり、1 施設平均は23.5 人であった。145 施設で合計832 名のスタッフが勤務していたが、心理職が最も多く全体の30.3%を占め、看護師、精神保健福祉士、作業療法士と続いた。プログラムの開始にあたり89.7%の施設では開始条件を定めており、主治医変更を求めている施設は59.0%であった。プログラム開始までの待機期間は12.3%の施設であり、平均40.2 日であった。利用にあたって一定のステップを設けている施設は70.5%であった。スタッフによる評価を実施している施設は84.9%であり、うち「標準化リワークプログラム評価シート」は66.9%の施設で利用されていた。77.4%の施設で他院の患者を受け入れており、うち83.2%の施設が主治医と文書で連絡を取っていた。復職時の勤務先企業の産業医・産業保健スタッフに対する連絡・調整の方法は、書面が最も多く68.7%、診察時が28.9%であった。人事労務担当者に対しての連絡・調整の方法も産業医・産業保健スタッフと同様に書面、診察時の順に多かった。復職後のフォローは外来診療が最も多く77.4%で、復職後のフォローアッププログラムを実施している施設は56.8%であった。プログラムの内容に関し146 施設1,448 プログラムを実施形態毎に5 区分に分けたところ「集団プログラム」が3 割弱、「その他のプログラム」と「特定の心理プログラム」が約2 割であった。医療機関毎にみると5 区分すべてに該当するプログラムを実施している医療機関は51%、4 区分に該当している医療機関は23%であった。平成27 年10 月の7 日間に登録されていたプログラム利用者2,603 人について個別調査を実施した。休職回数は、平均3.0 回、総休職期間は平均584 日であった。利用者のICD-10 による診断の内訳は、F3 気分(感情)障害が78.5%、F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性が13.1%であった。また、DSM-5 による双極U型障害の可能性がある利用者は27%、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(AD/HD)の可能性がある利用者は22%であった。

■職リハネットワーク No.67
  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター

【特集/復職支援の現状】
「うつ病リワーク研究会の会員施設でのリワークプログラムの実施状況と医療機関におけるリワークプログラムの要素」

うつ病リワーク研究会/医療法人社団雄仁会メディカルケア虎ノ門
五十嵐良雄、林俊秀

■公益社団法人日本精神神経科診療所協会 平成27年度田中健記念研究助成事業

研究者 五十嵐良雄
「中小零細企業の就労者を対象としたリワーク(復職支援)プログラムの開発について」

■公益社団法人日本精神神経科診療所協会 平成26年度田中健記念研究助成事業

研究者 五十嵐良雄
「精神科診療所における気分障害・不安障害で失職した患者に対する再就労支援に関する研究」

■社団法人日本精神神経科診療所協会 平成23年度田中健記念研究助成事業

「精神科診療所におけるうつ病・不安障害で休職した患者の復職後の長期予後に関する効果研究」
・・・五十嵐良雄

(研究要旨)

【背景】
 近年、リワークプログラムを実施する医療機関が増加しており、うつ病リワーク研究会会員施設では、精神科診療所を中心に32都道府県、約120施設がプログラムを実施している。

【目的】
 精神科診療所で治療中のうつ病・不安障害等により休職した患者の復職後の就労状況等の予後を追跡することにより、リワークプログラムが復職に果たす効果を判定し、プログラムの治療的意義を確立する。また、研究の実施により医療機関が行うリワークプログラムや復職支援に対する社会的理解を高めることを目的としている。

【方法】
 うつ病リワーク研究会正会員の属する精神科診療所の患者を対象としたコホート研究。対象は、休職2回以上または休職1回目でも連続して180日以上勤務できない状態である者とした。対象者およびその主治医等に対しアンケート調査を行い、復職後の就労継続日数を指標とした予後の解析を行う。対象者の組入期間は、平成22年9月より平成23年2月までの6ヶ月間であり、観察期間は平成25年12月31日までを予定している。
 アンケート調査は、対象者本人に対し、復職後3ヶ月おきに2年後までの計8回、EメールとWEBを利用した調査システムにより調査を行っている。また対象者の主治医等に対しては、郵送で組入時、復職時、復職後3〜6ヶ月おきに2年後までの計7回の調査を行っている。
 なお本研究は、うつ病リワーク研究会の研究組織であるワーキングチームとデータ管理のために組織された外部委員会により実施している。

【結果】
 平成24年2月27日現在、本研究の組入人数は11診療所247人である。対象者の現状は、復職175人(70.9%)、プログラム途中の中止脱落43人(17.4%)、現在もリワークプログラム中である者21人(8.5%)、消息不明1人(0.4%)、参加途中辞退7人(2.8%)である。
 対象者の基本属性は、男性202人(81.8%)、女性45人(18.2%)、リワークプログラム開始時の年齢は平均39.7才(SD7.8)、休職回数は平均2.3回(SD1.3)、延休職期間は平均20.4ヶ月(SD16.4)であった。ICD-10による主診断は、F31双極性感情障害64人(25.9%)、F32うつ病エピソード70人(28.3%)、F33反復性うつ病性障害67人(27.1%)、F34持続性気分障害16人(6.5%)、F40恐怖性障害7人(2.8%)、F41その他の不安障害7人(2.8%)、F42強迫性障害1人(0.4%)、F43重度ストレスへの反応及び適応障害8人(3.2%)、F45身体表現性障害7人(2.8%)であり、87.8%が気分障害圏であった。
 現時点での就労予後の追跡期間は、平均285.5日(SD120.2)である。対象者本人への調査票の回収率は、復職後3ヶ月後提出分(対象168人)が78.0%、6ヶ月後(対象154人)が79.9%、9ヶ月後(対象129人)が75.2%、12ヶ月後(対象76人)が76.5%、15ヶ月後(対象28人)が85.7%、18ヶ月後(対象2人)が100%であった。復職日を起点としたKaplan-Meier法による就労継続推定値は、1年後で78.5%(SE5.4)であった。



■「精神科病院マネジメント」15号

「うつ病リワーク」プログラムへの期待と展望
ゲスト: 五十嵐良雄(医療法人社団雄仁会メディカルケア虎ノ門理事長・院長)
聞き手: 南  良武(医療法人桐葉会木島病院理事長・院長)

「うつ病休職者の職場復帰準備性‐リワークプログラムにおける標準化評価シート‐」
秋山 剛(NTT東日本関東病院精神神経科部長)

■第5回うつ病リワーク研究会 年次研究会 プログラム・抄録集

 

■第6回うつ病リワーク研究会 年次研究会 プログラム・抄録集

プログラム・抄録集本文

変更正誤表

■第8回うつ病リワーク研究会 年次研究会 プログラム・抄録集

プログラム・抄録集本文

発表要約

■第9回うつ病リワーク研究会 年次研究会

発表要約